PipeWire とJACKサーバーの音を比較した感想(Pop!_OSとDeadBeef)

Linux

・ PipeWire とは何なのか知りたい
・PipeWireの今後の展望を知りたい
・PipeWireの音質は良いの?
・JACKサーバーとPipeWireの音の比較を知りたい

 PipeWire はPulseAudioに代わりスタンダードになる

この記事では、PipeWireの概要、今後の展望、使い方、その音質について紹介します。
PipeWireはPulseAudioに代わるスタンダードになるといわれる新しいサウンドシステムです。

今回は、音質に定評のある音楽プレーヤーソフト「DeadBeef」へのPipeWireの導入方法と音質のレビューを含めて紹介していきます。

 PipeWire の概要

PipeWire

PipeWireは、近頃のGNU/Linuxディストリビューションのリリースで、新たに採用されることが増えているオープンソーステクノロジーです。

開発者は、RedHat所属のWimTaymansという方です。

PipeWireは、Linuxシステムでオーディオ、ビデオ、そして、これらを処理するハードウェアを扱うためのソフトウェアです。

著名なディストリビューションでは、Fedora、Slackware、EndeavourOSなどで、すでに採用となっています。

その特徴としてよく目にするのは、PulseAudioの汎用性と、Jackサーバーの低遅延の両立、ということが挙げられます。
これが現実であれば、今考えうる最高のサウンドサーバーであるといえます。

PipeWireはこのような特性により、将来的にはPulseAudioを完全に置き換えるものになる、との声も聞かれます。

 PipeWire の今後の展望

PipeWireの今後に大きな影響を与えそうな情報があります。
Linuxの一大勢力であるUbuntuを開発するCanonical社は、2022年秋にリリースが予定されているUbuntu 22.10(Kinetic Kudu)で、PipeWireを採用することを計画しています。
しかも、PulseAudioとの共存ではなく、標準サウンドシステムとしてPipeWire単独での運用になるようです。

Ubuntuは、これまでPulseAudioを標準システムとして採用していたので、これは大きな転換であるといえます。

UbuntuのPipeWireへの移行は、2022年6月現在のリリースであるUbuntu 22.04 LTSですでに始まっています。

ただ、22.04 LTSでは、PipeWireとPulseAudioの両方がインストールされています。
PulseAudioがメインのサーバーとして使用され、PipeWireはWaylandでのスクリーンキャストと画面共有にのみ使用されています。

今後の計画では、Ubuntu22.10(Kinetic Kudu)のリリースで、PulseAudioは削除され、PipeWireでのみ運用されるようになります。

Linuxディストリビューションの一大勢力であるUbuntuがPipeWireを導入すれば、Ubuntuからフォークされる多くのディストリビューションもPipeWireの導入を進める流れと考えられます。

すでにPop!_OSなど一部のUbuntuベースのディストリビューションでは、PipeWireへの移行が始まっています。
大きな流れとしてPipeWireの導入は拡大していくのではないかと予想されます。

ただし、オーディオソフトなどでのPipeWire対応プラグインはまだ十分に整備されているとはいえません。
また関連情報が一般レベルでは簡単に入手できないため、幅広く浸透するまでには、まだ時間がかかるのではないでしょうか。

DeadBeefで PipeWire を再生してみた印象

僕は、Linuxを中心にしてPCオーディオ環境を作るときに、いろいろなプレーヤーソフトを比較しました。

Audacious、Clementein、Strawberry、Pragha、Pogo・・・。

使いやすさ、カスタマイズ性、機能、サウンドサーバーへの対応の幅、そして音質を確認していくなかで、最終的にDeadBeefをメインに据えることにしました。

最終的な決め手は、音質が好みであることでした。
DeadBeefはよけいな色付けのないストレートな音で、情報量や音場の表現のバランスが最も良いと思いました。

そのような経緯で、メインマシンは、JackサーバーとDeadBeefの組み合わせにして、もう1年以上経ちますがとても気に入っています。

今回、サブマシンに導入したPop!_OSは、標準のサウンドサーバーがPipeWireなので、こちらにもDeadBeefを入れてみて音を比較してみようと思います。

DeadBeefについて

DeadBeefは優れた機能性と、柔軟なインターフェイスをもつ、高音質な楽曲再生ソフトです。
音質は先に述べたとおり素晴らしいのですが、外観のカスタマイズ性も高くfoobar2000並みの柔軟性があります。
しかし、そのレイアウトの設定方法は独特で、不用意に誤った操作をしてしまうと、もとに戻すのに苦労します。
また、日本語で提供されている情報が少なく、海外サイトから情報を得ることが多くなります。

僕は日本語以外は得意ではないので、導入の際にけっこう苦労しました。
今回のように、別のPCにDeadBeefを導入するときのことを考えて、別の記事にDeadBeefの導入についてまとめています。

導入を検討する際に、参考にしていただけたらと思います。

PipeWireの音質を評価する

PipeWireの音質について、僕なりの見解をまとめてみます。
音質の評価は、主観が入り込む部分が多いため、参考程度の情報になりますが、なにかの目安になれば幸いです。
また、DACやアンプ、スピーカーの音の傾向、相性もあるため、純粋にPipeWireとDeadBeefから出る音の評価にならないことはご容赦いただきたいと思います。

Pop!_OSのレビュー記事では、再生ソフトにAudaciousを使用して、PipeWireの印象を紹介しました。
この時は、正直にいって「普通」。
PulseAudioとの違いを見つけることができませんでした。

「各パートの書き出し」「音の分離」「音場」「エネルギー感」など、言葉で表現しにくい内容も多いのですが、音質をチェックするときにはこれらの項目を意識して聴き込むようにしています。

再生する音楽ソースのジャンルは、独断ですが僕の好みで以下の4曲で比較します。
いずれも「FLAC」のフォーマットでPCに保存したものです。

  • Tak Matsumoto & Daniel Ho 「Wonder Blues」
  • 小澤征爾指揮、サイトウキネンオーケストラ「シューベルト Symphony #9 より 4楽章Finale」
  • ミロシュ・サードロ「バッハ Suite for Cello Solo No.1 in G, BWV 1007 – 2. Allemande」
  • Sing Like Taking 「闇に咲く花 Feat.サラ・オレイン」

これは、以下の記事で、Linuxの音楽再生ソフトを比較したときと同じ曲です。

 PipeWire+DeadBeefの音質レビュー

それぞれの曲を、メイン機のJACKサーバーからの出力と、PipeWireの出力で聴き比べてみました。

Tak Matsumoto & Daniel Ho 「Wonder Blues」

B’zのギター、松本孝弘のソロアルバムより、アコースティックギターのソロから始まり、バンドサウンドに展開していく熱量の高い一曲。

JACKサーバーからの出力では、音場の広さと立体感があり、各パートの分離が明確で、低域から高域までバランス良く出力する印象の音。

対してPipeWireでは、音場の広さは若干狭めで、各パートは若干分離が良くない。
やや中域が強調された音の出方を感じた。

小澤征爾指揮、サイトウキネンオーケストラ「シューベルト Symphony #9 より 4楽章Finale」

シューベルトの巨大な交響曲の終楽章。
強奏と弱奏のコントラスト、各楽器の「歌い」を聞くことができる。
この演奏は、理路整然とした音のバランスと確かな技術、優れた録音が揃っています。

JACKサーバーからの出力では、音場の広さが自然。
多くのパートが一緒に鳴るところでもそれぞれの音が埋没しない。
弦のアンサンブル、特に低音弦の響きが濁らない。
管楽器はきらびやかで、主張がはっきりしている。
全体にクリアに空間を描き出す印象。

対してPipeWireでは、一枚ベールをかぶったような音の響きになった。
特に低音楽器のバランスが悪く、全体を濁らせるような印象。
そのためか、各パートのメリハリがあまり感じられない。

ミロシュ・サードロ「バッハ Suite for Cello Solo No.1 in G, BWV 1007 – 2. Allemande」

バッハのチェロソナタ。
残響がたっぷりある場所で録音されており、チェロの響きがどこまでも上に伸びていくような印象がある。
縦に広い空間の中で、音の出どころがしっかりと感じられるような再生が理想だと思います。

JACKサーバーからの出力では、音場が縦にも横にも広く、豊かに響いていくのが特徴。
音場の中心に弾き手の存在感がある。
直接の出音と響きのバランスがよく、自然な音場で再生される。

対してPipeWireでは、チェロの存在感がはっきりしており、響きはやや抑えられている印象。
中域の響きが特に明確。
弾き手が出す音が主役で、残響やホールの響きは脇役として描かれているように思います。

Sing Like Taking 「闇に咲く花 Feat.サラ・オレイン」

立体的な音場と、佐藤竹善、サラ・オレインの二人のボーカルの絡み合いが聞きどころ。
一見、音数が少ないように聞こえるが、後ろの方で細かくいろいろな音が鳴っているので、再生デバイスの能力をはかることができます。

JACKサーバーからの出力では、音場が縦にも横にも広く、低音から高音までバランスよく鳴っている印象。
特に、ボーカル2人のハーモニーや主旋律の際立たせ方がよい。
細かな装飾音や、リズム楽器も、明確でありながら主張しすぎない。

対してPipeWireでは、低音域のパワーがやや足りないためか、音がぼやける印象。
ボーカルの高音域もパワーが弱いため、主旋律がハーモニーに埋もれるところがあった。
細かな装飾音や、リズム楽器は、鳴っているのは分かるがやや明瞭さに欠けるところがあった。
音場はJACKと同様に広く、バランスが良かった。

PipeWireとJACKの比較のまとめ

全体的にJACKサーバーの音を評価する内容になってしまいました。
先にも述べたとおりスピーカーやアンプ、DACとの相性もあるので必ずしもJACKが優れているとはいえません。
今回については、僕の再生環境では、JACKサーバーを使用したほうが良い音で再生できた、ということになります。

全体を通しての感想ですが、PipeWireの再生では、中音域に山があるような音の出方で、各パートの分離が弱く、低音域は若干の濁りを感じました。

ただ、これは注意して聴き込んだときに感じた違いです。
例えば、BGM的に音楽を流したり、YouTubeの再生に用いるなどの使い方であれば、問題にならないような程度の話です。

JACKサーバーは、サスペンドからの復帰時や、DACとの接続が切れた時など、若干ナーバスな挙動をするときがあります。
PulseAudioやPipeWireのように存在を意識しなくても動いてくれるサウンドデバイスのほうが、一般的には使いやすいのではないかと思います。

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今回は、2台のPCを使って、PipeWireとJACKサーバーの音の違いを比較しました。
PCオーディオは、使うデバイス同士の相性や、ソフトウェア、サウンドサーバーなど、たくさんの要素が音に影響してきます。
あなたに合った環境を作るまでには試行錯誤が必要になりますね。
そんなときに、いろいろと実験的に使えるPCを用意すると、比較したり、テストしたりするのが簡単になります。

LinuxはWindowsに比べて動作が軽く、古いパソコンでも軽快に動作する、という特徴があります。
PCオーディオで遊んでみるなら、中古PCでも十分に対応が可能です。

ご自宅の古くなったパソコンを活用したり、テスト用に少し古いパソコンを安く買って試してみるのもよいでしょう。
おおまかな目安ですが、Intel製CPUであれば、第6世代以降のcore i3、第4世代以降のcore i5が積まれたパソコンであれば、Linuxディストリビューションでたくさんのことができでしょう。
このグレードのパソコンは、中古通販サイトを覗いてみると、ノートパソコンの安いものでは1万円台、高くても4万円程度で購入できるものが多くあります。
(デスクトップはもう少し幅があるようです)

店舗に行くのが面倒なあなたには、通販サイトがおすすめです。
各機種のスペック、細かな特徴まで掲載されているので、実機を見なくても安心して購入することができます。
最後に僕のおすすめの通販サイトのリンクを貼っておきます。

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