Linuxの 音楽アプリ を比較してみた
LinuxMintをメインPCに据えて、設定がだいたい終わり、ようやく本腰を入れてPCオーディオをセッティングしようと思いました。
ゆくゆくはJACKサーバーを使ってみたいと思いますが、まずは 音楽アプリ を検討して使い勝手のよいものを見つけたいと思います。
この記事では、Linuxの 音楽アプリ による管理方法の違い、音、使い勝手、出力方法などについて紹介します。
音楽アプリ による音の違いはある?
アプリをいろいろと検討しようと思った理由は、「使い勝手の良いものを探す」ことだったのですが、そのときにふと気になったのは、アプリによる音の違いはあるのか、ということでした。
Windowsでは再生アプリによる音の違いがありました。
Linuxでもそうなのか、という疑問を解決するため、各アプリの特徴を調べ、聴き比べをしてみました。
結論は、 音楽アプリ による音の違いはある、です。
それも、結構ある、というのが僕の感想です。
IPv6対応で最大1Gbps!速いドコモ光は【GMOとくとくBBのドコモ光】
音楽アプリ を分類してみる
まず、オーディオ用アプリを分類します。
音源の管理方法から分類すると、
- ライブラリ管理型
- プレイリスト管理型
この2つに分けられます。
「ライブラリ管理型」は、音源データをライブラリとしてアプリ上に読み込んで管理するものです。
アプリを立ち上げると、すぐに音源にアクセスできるため、再生までのプロセスが短いという特徴があります。
このタイプのアプリには、パソコン上の保管フォルダのツリー構造でライブラリを表示できるものがあります。
パソコン上のファイルシステムと同じ順番で楽曲をブラウジングできるため、曲を探すときに違和感がありません。
この他には、iTunesのような外観のアプリもライブラリ管理型になります。
「プレイリスト管理型」は、音源データをアプリ内に取り込まず、再生するときにファイルを指定することで、音源が「プレイリスト」としてアプリ上で処理されます。
都度、音源を指定するだけでなく、いくつもの音源をプレイリストとしてまとめて保存しておくことができます。
ジャンル、アーティスト、アルバムなど、プレイリストを作っておくことで、音源へアクセスしやすくなります。
また、音源管理方法での分類以外には、対応する出力形式によって分類することもできます。
Linuxには、「ALSA」「OSS」「PulseAudio」「JACKサウンドサーバー」などの出力方法がありますが、これらへの対応の有無で分けることもできます。
今回は音がいまいちといわれる「PulseAudio」ではなく、「ALSA」と「gstreamer」出力に対応するアプリで比較を行います。
音楽アプリ の比較
それではアプリについて、使ってみた印象を紹介していきます。
今回比較対象にしたのは、次のアプリです。
- Quod Libet( https://quodlibet.readthedocs.io/en/latest/ )
- Pragha( https://pragha-music-player.github.io/ )
- Audacious( https://audacious-media-player.org/ )
- Melody( https://anufrij.org/melody/ )
アプリの出力設定は「ALSA」もしくは「gstreamer」にしました。
今回検討した他にも、「DeaDBeef」や「Clementine」「Strawberry Music Player」「POGO」「MPV」など試してみたいアプリがあるので、追々追加していきます。
試聴に使った音源はこちらです。
いずれも「FLAC」でPCに保存したものです。
- Tak Matsumoto & Daniel Ho 「Wonder Blues」
- 小澤征爾指揮、サイトウキネンオーケストラ「シューベルト Symphony #9 より 4楽章Finale」
- ミロシュ・サードロ「バッハ Suite for Cello Solo No.1 in G, BWV 1007 – 2. Allemande」
- Sing Like Taking 「闇に咲く花 Feat.サラ・オレイン」
選曲は大編成のもの、器楽のソロ、インスト、歌もの、から選んでみました。
なお、感想はあくまでも僕の主観ですので、参考程度にしていただけたら幸いです。
Quod Libet
Qudo Libet は「ライブラリ管理型」のGUI上で操作する音楽アプリです。
非常に軽量で、データ量の多いライブラリもサクサク扱えるのが特徴です。
UIもわかりやすく、Browsタブより、ブラウジングの方法を切り替えることができます。
「ファイルシステム」を選択すると、左側のペインにライブラリツリーと、右側ペインに再生リストと
初期状態では機能はそれほど多くないですが、プラグインを有効にすることでいろいろな機能が利用可能になります。
バックエンドはgstreamerです。
・音の印象
Tak Matsumoto & Daniel Ho 「Wonder Blues」
音場は中央よりで、広がりよりも音の密度の高さに意識が行く。
際立たせる音ははっきりしており、バッキングは一体感のある響き。
小澤征爾指揮、サイトウキネンオーケストラ「シューベルト Symphony #9 より 4楽章Finale」
音場の表現は自然だが広さはあまりない。
全体的なアンサンブルをよく聴かせる。
ミロシュ・サードロ「バッハ Suite for Cello Solo No.1 in G, BWV 1007 – 2. Allemande」
チェロそのものを際立たさせるのではなく、録音された場所の響きや、残響、空気感がよく表現されている。
Sing Like Taking 「闇に咲く花 Feat.サラ・オレイン」
ボーカル二人の歌がよく響く。
各パートは適切な音場感で描かれ、楽曲としてのまとまりを感じさせる。
Audacious
Audaciousは、軽量でシンプルな、プレイリスト型のプレイヤーです。
タブでプレイリストを切り替えて使用できます。
プレイリストのインポート・エクスポートができるなどユーザーライクなUIも特徴です。
ファイルフォルダで音楽ファイルを管理している方は、目的の音源にたどり着くのが楽です。
豊富なプラグインが用意されていて、多くのデコーダーが装備されておりMP3などの再生も容易です。
出力も柔軟に選択でき、「ALSA」「OSS」「PulseAudio」「JACKサウンドサーバー」にも対応しています。
・音の印象
Tak Matsumoto & Daniel Ho 「Wonder Blues」
音場の広さ、楽器の分離の良さ、定位が明確で、立体的な音の空間を作る。
すべての音域がフラットに出力される印象。
小澤征爾指揮、サイトウキネンオーケストラ「シューベルト Symphony #9 より 4楽章Finale」
各パートの分離の良さと、定位の明確さが際立つ。
弦楽器のしなやかさ、管楽器の迫力がきっちりと表現されている。
ミロシュ・サードロ「バッハ Suite for Cello Solo No.1 in G, BWV 1007 – 2. Allemande」
チェロの深い響き、弦の擦れる響きなどもよく表現されている。残響音などは控えめで、楽器の響きに集中できる。
Sing Like Taking 「闇に咲く花 Feat.サラ・オレイン」
ボーカルの表情が自然で、かつ分離が明確。
ハーモニーの響きがよく感じられる。
音場が明快で、バックの音の構成、パートごとの響きとハーモニーのバランスが良い。
Pragha Music Player
Praghaは、フォルダ構造に基づいたライブラリ管理型のアプリです。
実用的な曲のフィルタリングも備えており、プレイリストの作成も容易です。
mp4、m3a、ogg、flac、asf、wma、およびape形式のオーディオファイルの再生、編集ができます。
プレーヤーにはネイティブデスクトップ通知、コマンドライン管理があります。
ファイルマネージャーのように、ツリービューのサイドバーから楽曲を選択して再生できるため、直感的な操作が可能です。
出力は、「ALSA」「OSS」「OSS4」「PulseAudio」に対応。
・音の印象
Tak Matsumoto & Daniel Ho 「Wonder Blues」
音場は自然で各楽器の配置が見える。
メインの旋律とバッキングがうまく調和した響きを聞くことができる。
小澤征爾指揮、サイトウキネンオーケストラ「シューベルト Symphony #9 より 4楽章Finale」
音場の表現は自然で、楽器の分離は良いがアンサンブもよく響き、バランスがよい。
ミロシュ・サードロ「バッハ Suite for Cello Solo No.1 in G, BWV 1007 – 2. Allemande」
各弦のそれぞれの響きが混じり合うような部分があり、やや分離の悪さを感じる。
Sing Like Taking 「闇に咲く花 Feat.サラ・オレイン」
ボーカルの音像が大きく、低位が不明確な印象。
バックの演奏は歌を引き立たせるが、ボーカルが大きすぎるのが残念。
Melody Music Player
Melody Music Playerは、アルバムビューを中心とした、ライブラリ管理型のアプリです。
音源のカバー画像はMusic Brainzから自動で取得されます。
ユーザーがカスタマイズできる範囲が限られていますが、よく考えられたUIのおかげで操作していてストレスは感じません。
ただ、日本語の対応は不十分で、楽曲検索はアルファベットを使用することになります。
・音の印象
Tak Matsumoto & Daniel Ho 「Wonder Blues」
中音域が充実しており、各楽器の分離の良さと定位が明確。
楽曲の構成、聞かせどころがよく分かる。
情報量が多く、すべての音が調和しつつもよく聞こえる。
小澤征爾指揮、サイトウキネンオーケストラ「シューベルト Symphony #9 より 4楽章Finale」
音場の表現は自然で、アンサンブはよく響く。フォルテとピアノの幅は広くない印象で、よくも悪くもまとまりのある音。
ミロシュ・サードロ「バッハ Suite for Cello Solo No.1 in G, BWV 1007 – 2. Allemande」
チェロの胴鳴りなど響きをよく表現する。
録音の古い音源の特徴がそのまま音として出る印象。
中音域に音のエネルギーを感じる。
Sing Like Taking 「闇に咲く花 Feat.サラ・オレイン」
それぞれの音の定位がしっかりしており、ボーカル2人の音像も明確に分かる。
音場が広く、ニアリスニングフィールドではもったいないほど。
メインの 音楽アプリ をどれにするか
今回、4種類のアプリを試してみました。
WindowsからLinuxへの変更で音が良くなったと浮かれていましたが、アプリによる音の違いも結構大きいことがわかりました。
僕の好みですが、ジャンルを問わず良い音と感じたのは「Audacious」です。
若干、高音域が強い感じがするのですが、概ねフラットな出音で、音場も広く立体的なので、どんな曲でも対応してくれる印象です。
次点は「Melody Music Player」です。
中音域のエネルギー感が強く、パートごとの分離が良い音です。
反面、強弱の幅はやや狭い印象でまとまりがあります。
ただ残念なのは、日本語とジャケ写の取り込みの対応が不十分なことです。
日本語の文字化け、検索ができないのは、使い勝手が悪いです。
またせっかくのデザイン性の高い操作画面も、写真なしの音源が多くあると残念な感じになってしまいます。
UIに限っていえば「Quod Libet」と「Pragha Music Player」は、ファイルシステムをブラウズするように音源を探せるので、僕には非常に使いやすいアプリです。
なかなか悩ましいところではありますが、当面は「Audacious」をメインにしてセッティングを詰めていきます。
並行して、まだ試していないアプリを触ってみて、決定版を見つけたいと思います。
関連記事:
Linux でつくる高音質な PCオーディオ 環境①〜システム構築の考え方〜
Linux Mint 20.2 のインストール【SSD換装によるパソコンの活用⑤】
低latency化した Linux Mint の実力とは? 【メインPCとしてのLinux②】
Linux Mint にインストールすべきアプリ【メインPCとしてのLinux環境①】
コメント
昔から今まで、ウブンツスタジオを使っていた。
初期の頃は、レイテンシーがインストールされておらず、自力で入れる必要があった。
今の物は、最初から設定されているようだ。
しかし、非力なマシンではレイテンシーが追いついていかないようだ。
CPUの動作が常にMAXである。このソフトは、やはり、中級以上の能力を持ったものでないと実力を発揮しないようでもある。音楽とビデオに関しては、現時点で最高のものかもしれない。
Windowsをメインにしているが、標準のメディアプレーヤーは使いやすいのだが音質がイマイチと言う処がある。
アイチューンも入れているのだが、こちらの方が音質的には良い感じがするが、操作的に面倒。
そんな中で、5kプレーヤーと言うのが登場したのだが、これが、うちには最も感覚的に良い音だと感じた。
それ以外にEqualizer APOと言うのがあって、これも中々に良いものだった。設定が面倒だがシステム全体に作用することもあって一度だけ設定すれば使う必要もない。
Windows、Linuxで使えるリアルオーディオアンプを模写した本格的なソフトウェアオーディオアンプと言うのが登場しないのは残念ではある。